精神疾患治療の歴史~精神の病への認識と治療法はどのように変遷したか~

  • 作成日:2017.09.26
  • 更新日:2017.09.26
メンタル
監修

豊田早苗(とよださなえ)
とよだクリニック院長
とよだクリニック認知症予防リハビリセンター センター長

文明社会が発達するにつれ、私たちは精神の病に侵されることが多くなってきています。

しかし、精神疾患自体は近代になって生まれたわけではありません。存在自体を認識し、研究と治療が始まったのがここ数百年のことです。そのため、現代でも精神疾患に対する理解はなかなか深まっていません。

そこで今回は、精神疾患治療の歴史に触れてみたいと思います。

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人類史と精神疾患治療

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精神疾患はいつから認識されていたのか?

日本では平安時代に空海が心の病として、ヨーロッパでは古代ローマ時代にヒポクラテスが脳の病気として精神疾患の概念を語っています。

ですが、治療法もなければ、病気のメカニズムも分からない時代であり、日本では「狂気」「乱心」として、西洋においては「悪霊に取りつかれた者」として差別的な扱いを受けていました。

精神疾患治療の歴史

世界

今では、アメリカが医療先進国ですが、現代医療の基礎を築いたのはヨーロッパであり、精神疾患の治療もヨーロッパから発展していきました。

その歴史をさかのぼってみてみると、古代ヨーロッパでは、精神疾患はその不可解な言動から悪霊に取りつかれた者、という考えが広まっていました。

ところが医学の父と言われるヒポクラテスの登場により、治療法や原因は分からないものの、悪霊説が否定され、体の病気と同じとように扱われるようになりました。これにより、偏見や差別はほとんどなくなり、精神疾患に対して現代の作業療法的な治療が行われていました。

しかし、中世ヨーロッパになると、ヒポクラテスが提唱した考えは影を潜め、宗教的な考えが強まるようになりました。そして、再び、精神疾患は、悪霊に取りつかれた者との考えが広まり、「魔女狩り」と称して多くの方が捕まり、処刑されました。

15~16世紀ごろになると、精神疾患の者を収容する収容所がいくつか作られましたが、そこでの処遇は拘束監禁状態の非人道的なものでした。

18世紀に入り、やっと、「病める人」と認識されるようになり、精神疾患の研究も行われるようになってきました。病める人を収容する病院もでき、拘束せず心理的な働きかけによる治療が行われるようになりました。

19世紀になると、統合失調症、躁鬱病など現代の精神疾患の概念が確立し、研究も盛んにおこなわれるようになりました。ですが、病気のメカニズムは解明されていなかったために、全く根拠も効果もないマラリア療法やインスリンショック療法など意識をなくすことで症状を抑える治療が行われていました。

20世紀になると、病気のメカニズムも解明され始め、仮説に基づく薬の研究が行われるようになってきました。

そしてついに1952年フランスで統合失調症に対する薬「クロルプロマジン」が開発されました。

この薬の登場によって、症状を薬でコントロールすることができるようになり、以後、様々な薬が世界中で次々と登場し、薬物治療が精神疾患の治療の主体となっていきました。

日本

日本においても、平安時代から江戸時代にかけて、精神疾患は、霊に取りつかれた「狂気」「乱心」として扱われていました。

そして、家の一室で監禁されたり、お寺に収容されて、滝に打たれるなど宗教的な儀式を受ける治療が行われていました。ただ、ヨーロッパほどの差別的な扱いは、なかったようです。

明治に入り、精神疾患という病気概念が確立した後も、有効な治療法はなく、自宅の一室の不衛生な環境下に監禁監視される状態は続きました。

法の制定等もあり、精神病院が設立されたりもしましたが、監禁監視という扱いは変わらず、治療もロボトミー手術など欧米の治療を習って行われたりしましたが、有効的ではありませんでした。

1960年代になって、日本でも世界同様、薬による治療法が提唱され始め、ようやく、日本でも薬物治療を主体とする有効的な治療が行われるようになりました。

精神障害を患っていたと考えられる歴史上の人物

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歴史に名を残す有名な人たちの中には、精神的な病気を抱えていたとされる人達が多くいると言われています。

絵画「ひまわり」で有名なゴッホ、「叫び」で有名な画家ムンクは、統合失調症を患っていたと言われていますし、音楽家のベートベンやモーツァルトもうつ病であったと言われています。

日本人においても、小説家として有名な夏目漱石や芥川龍之介、太宰治は、統合失調症であったと言われています。

その他にも、精神障害を患っていても、その道を究め、有名になった人たちは大勢いると言われています。

過去に行われていた精神疾患に対する処置

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現在は行われていませんが、過去、主に欧米において行われていた精神疾患に対する治療をいくつか紹介します。

マラリア療法

意図的にマラリアに感染させる治療法です。

マラリアに感染すると高熱が出るため、幻覚や妄想等が出なくなるという理論で行われていました。

インスリンショック療法

インスリンを注射する治療法です。

糖尿病でない人にインスリンを注射すると低血糖を起こし、ショック状態となり、意識が消失します。意識がなくなれば、幻覚や妄想、異常行動などもなくなるとの理由で行われていました。

カルジアゾールけいれん療法

てんかん発作を起こす人は、統合失調症になりにくいと言われており、その説に基づいて行われた治療法です。カルジアゾールを注射し、意図的に、てんかん発作を起こさせます。

てんかん発作を起こすことで統合失調症の幻覚妄想が改善したとされています。ただ、重篤なてんかん発作を起こして命を落とす命の危険性もあったようです。

ロボトミー手術(前頭葉白質切除術)

20世紀前半、日本でも行われていた治療法です。

すでに、精神疾患の原因は、脳にあると分かっていましたので、原因の脳を切除することで病気を治すことが出来ると考えて行われていました。左右両方の脳の前方部分(前頭葉)を切除する手術です。

この手術により、統合失調症やうつ病が改善したという例もあったようですが、そのまま亡くなられてしまう方や人格崩壊を起こす方、脳機能が失われ廃人になってしまう方も多くおられました。

電気けいれん療法

カルジアゾールけいれん療法と同じ原理で、脳に電流を流し意図的にけいれん発作を起こさせることで症状の改善を図る治療法です。

現在も行われている治療法ですが、現在は、昔と違い、全身麻酔にて呼吸・循環を管理すること、筋弛緩剤を使用し体のけいれんは起こらないようにすることなど安全性を確保できる状態で実施することとされています。

現代の精神疾患治療

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現在の精神疾患に対する治療について主なものを紹介いたします。

薬物治療

現代の精神医療の主体をなす治療法です。

1952年に世界で初めて統合失調症治療薬「クロルプロマジン」が開発されて以来、世界中で、精神疾患に関する研究が行われてきました。そして、統合失調症治療薬だけでなく、抗うつ剤、抗不安薬、睡眠薬など精神疾患に対する数多くの薬が開発されました。

これにより、患者さんの症状や状態に合わせて、有効な治療薬を選択し、症状を改善させ、病気を治療することが可能となりました。

精神療法

認知行動療法や森田療法に代表される治療法です。カウンセリングと呼ばれることもあります。

病気を引き起こしている、症状の悪循環を招いている考え方にアプローチし、修正を促すことで症状の改善、病気の改善、再発予防を図ります。

作業療法や生活技能訓練

統合失調症やうつ病の方などで、認知機能や生活能力が低下してしまっている場合に対して行われる治療法です。

ゲームをしたり、物作りを行ったり、脳トレーニングを行ったりして、脳機能の回復を図ったりします。

また、模擬的につくられた職場で、人との関わりを学んだり、仕事への取り組み方を学びなど社会復帰のリハビリを行ったりもします。

まとめ

精神疾患に対して、人類はこれまで様々な方法でアプローチしてきました。誤った治療法や認識は過去にはありましたが、それらは次第に薄れつつあります。

今後、精神疾患についての研究がますます進み、治療法も確立されていくでしょう。今はちょうどその過渡期にあるのかもしれません。

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