神経伝達物質と精神疾患「モノアミン仮説」とは

  • 作成日:2017.07.19
  • 更新日:2017.08.04
メンタル

うつ病などの精神疾患には様々な原因が考えられています。その一つに脳内の神経伝達物質が挙げられます。セロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンといった物質です。これらはモノアミン系といわれる神経伝達物質で、それゆえにモノアミン仮説やセロトニン仮説、ドーパミン仮説といった精神疾患の原因としての仮説が提唱されてきました。今回はその一部をご紹介します。

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モノアミン仮説

うつ病

うつ病では、脳に何らかの変化が起こっていることが症状を引き起こす原因と考えられていて、その一つにモノアミン仮説があります。

モノアミン仮説は1950年代に提唱された仮説で、当時、結核治療薬として使用されていたイプロニアジド、統合失調の薬として開発されたイミプラミンをうつ病患者に投与したところ、症状が改善したことが始まりの仮説です。

その後、薬の作用についての研究が進められ、イプロニアジドには、モノアミン酸化酵素阻害作用が、イミプラミンには、ノルアドレナリンやセロトニンの再取り込み阻害作用があり、これらの作用がうつ症状を改善させていたことが分かりました。

そして、うつ病の人では、脳内の「ドーパミン」「ノルアドレナリン」「セロトニン」といったモノアミン系神経伝達物質が不足しており、これらの物質を増やすことで、うつ症状が改善し、うつ病が治療できるとした仮説が立てられ、これをモノアミン仮説と呼んでいます。

モノアミン仮説が唱えられて以降、モノアミン仮説に基づく、数多くの抗うつ薬が開発されてきました。現在も、うつ病治療に使用されている抗うつ薬のほとんどがモノアミン仮説に基づいて作られた薬です。

ただ、近年、脳の研究が進む中で、うつ病の人では脳血流が減量しているとか海馬と呼ばれる記憶を司る部分の脳細胞が減少しているといったことが分かり、モノアミン仮説だけではうつ病の状態を説明できない部分もでてきました。

双極性障害

双極性障害とは、感情の高揚と活動量増加を主体とする躁状態と気分の落ち込みと活動低下を主体とするうつ状態が交互に起こる精神疾患で、躁うつ病とも言われています。

1970年代に、双極性障害では、躁状態の時にはドーパミンの過剰な分泌を抑える薬が効果を発揮し、うつ状態の時は、抗うつ薬がうつ症状を和らげることが分かり、うつ病と同じく、脳の神経伝達物質である「ドーパミン」「ノルアドレナリン」「セロトニン」が双極性障害の症状にも関与していると考えられるようになりました。

そして、双極性障害では、躁状態の時は「ドーパミン」「ノルアドレナリン」は過剰に分泌されているが、うつ状態の時は逆に低下していること、「セロトニン」は、そう状態の時もうつ状態の時も不足した状態が脳内で起こっているとう仮説がたてられました。

この仮説を双極性障害のモノアミン仮説と言います。

でも、この仮説では、何故、躁状態の時とうつ状態のときで、「ドーパミン」「ノルアドレナリン」の分泌に変化が起こるのかが解明されていませんでした。

そこで、そう状態の時とうつ状態の時で「ドーパミン」「ノルアドレナリン」の分泌が相反する状態になる原因を追究する研究が行われるようになり、双極性障害では、神経伝達物質が結合する受容体(神経細胞にあるドーパミンなどの神経伝達物質が結合する場所)の機能異常があるという説や細胞内のミトコンドリアの機能異常があるという説などが唱えられるようになりましたが、いまだ、明確な原因の究明には至っていません。

セロトニン仮説

不安障害

不安障害とは、不安や恐怖を強く感じる精神疾患の総称で、パニック障害や強迫性障害、社交不安障害や全般性不安障害などが含まれます。

1970年代に抗うつ薬として開発されたSSRI(セロトニン受容体にだけ作用して脳内のセロトニン量を増やす薬)がうつ病だけでなく、不安障害にも効果を発揮する事が分かり、不安障害においてもモノアミン系神経伝達物質の一つである「セロトニン」が関与していると言われるようになりました。

これが不安障害のセロトニン仮説の始まりです。

その後の研究で、不安障害では、扁桃体(側頭葉の内側、海馬の近くにある)の働きに異常があり、通常よりも過剰に働いていることが分かってきました。

扁桃体は、情動に関係しているため、扁桃体の働きが過剰になると、不安や恐怖を強く感じるようになります。また、扁桃体は、セロトニン系神経が作用している部分で、セロトニンによって、その働きが抑えられるということも分かってきました。

つまり、不安障害では、セロトニンの分泌低下があり、そのことが扁桃体の過剰な働きを引き起こしている原因で、不安や恐怖を強く感じるようになる不安障害の症状を起こしていると考えられています。ただ、この考え方は、まだ仮説であり、明確な答えはまだ出ていません。

ドーパミン仮説

統合失調症

統合失調と言えば、皆さん、すぐに、幻覚や妄想をイメージされるかと思います。この統合失調症の特徴的な症状である幻覚や妄想、幻聴は、モノアミン系神経伝達物質の一つであるドーパミンの過剰分泌によってドーパミン神経が過剰興奮することで起こっているとする説が統合失調症のドーパミン仮説です。

実際に、統合失調症で起こる幻覚や妄想、幻聴の症状に対しては、ドーパミン仮説に基づいて開発された脳内のドーパミンの分泌を抑える薬が効果的で、治療として用いられています。

ただ、統合失調症では、幻覚妄想幻聴といった症状の他に、無気力、感情鈍麻、閉じこもりなどの脳機能の低下を示す症状も見られるため、ドーパミン仮説による脳興奮状態では統合失調症の症状全てを説明できません。

統合失調症のグルタミン仮説

そこで、新に登場したのが統合失調症のグルタミン仮説です。

グルタミン酸仮説は、統合失調症では、ドーパミンと同じく脳の神経伝達物質であるグルタミン酸が結合する受容体(神経細胞にある神経伝達物質が結合する部分)に異常があり、グルタミン酸神経の機能低下が起こっており、幻覚妄想幻聴などの陽性症状や無気力、感情鈍麻、閉じこもりなどの陰性症状が出現しているという仮説です。

実際に、統合失調症の人の脳脊髄液を調べるとグルタミン酸濃度が低下していることがその後の研究で分かり、現在では、ドーパミン仮説よりもグルタミン仮説が有力視されています。

まとめ

以上みてきたように、精神疾患の原因は未だに完全に解明されてはおらず、発展途上の領域といえるでしょう。現在の私たちは精神疾患治療の発展の中にあります。原因が明確になっていないということは、治療法も研究の成果によって変わっていくということ。精神疾患は人類の歴史で見れば、最近になって注目されるようになりました。今後も研究が進み、精神疾患の全貌が明らかになる日も来るかもしれません。

※この記事は、医師の資格を保有している方によって執筆されました。
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