健康

2015/12/26

コレステロールの基準値について…なぜ基準値は変更されるのか?

コレステロールの基準値について…なぜ基準値は変更されるのか?

コレステロール。大人になってよく耳にする言葉です。コレステロールは基準値が変更され、そのたびにニュースを騒がせてきました。コレステロールを気にする前に、その基準値を知らないという人もいるでしょう。今回は、コレステロールの基準値や異常値、コレステロールの基準はなぜ変わるのかなどについて多面的に見ていきます。



50代男性からの相談:「コレステロールの基準値について教えて下さい」

健康診断で、悪玉コレステロールが基準値より高い値が出ました。
基準値は70~139で結果は154でしたが、脂質異常症で要医療と書かれていました。そのため医師に相談したら「この程度なら食事療法と運動をするぐらいでよい、アメリカの基準値はもっと高いですよ」といわれました。
本当に危険な数値というのはどの程度なのか、どのぐらいの値だと真剣に治療に専念しなければいけないのか、教えてください。

コレステロールの基準値


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コレステロールの基準値が設定されているのは、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な病気を引き起こす可能性が高いと考えられているためです。もちろん、基準値は個々人によって異なるのが道理ですが、一般的な目安として基準値というものが決められているのです。

基準値を決める一番の理由は現在の医療が予防に重きを置いていることにあるのではないでしょうか。実際にその病気にかかる前に対策を施すことで、健康は保たれることとなります。確かに、コレステロールが基準値を超えてしまっていても普通に生活をしている人は多くいるでしょう。しかし、それは味蕾の病気のリスクを抱えたままということになるのです。

それでは、コレステロールに関連する項目について正常な数値がどのようなものになっているか見ていきましょう。

総コレステロール

140~199mg/dL

※総コレステロールよりLDLコレステロール判定を優先する

HDLコレステロール

40~mg/dL

LDLコレステロール

72~178mg/dL

中性脂肪

39~198mg/dL

※30~80歳

こうした基準の上で、専門家は相談者さんに対して次のように回答しています。

現在は基準値をわずかに上回る程度ですので、まずは運動療法と食事制限をするようにいわれたのではないでしょうか。運動と食事で改善できず、さらに数値が高くなるようでしたら、薬の内服が必要でしょう。(看護師)
アメリカの基準値が高いといわれても食生活が違いますし、日本人ですので日本人の基準で考えなければなりません。また、コレステロール値は前日に食べたものでも左右されるため、1回の検査だけでは本当に治療が必要かはわかりません。(看護師)

また、こうした基準値はケースによって上下することがあります。基準値内でも改善を求められる場合は、他に病気のリスクを抱えている状態だといえそうです。


脂質異常症の判断値


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血中のコレステロールが異常値を示すと、脂質異常症と診断されることがあります。かつては高脂血症と呼ばれていたものの、コレステロールの基準が変更したことで脂質異常症といわれるようになりました。

脂質異常症には以下の4つのタイプが存在します。

  • 高LDLコレステロール血症
    LDLコレステロールが基準値を大きく上回っている
  • 境界域高LDLコレステロール血症
    LDLコレステロールが基準値をやや上回っている
  • 低HDLコレステロール血症
    HDLコレステロールが基準値を下回っている
  • 高中性脂肪血症(高トリグリセリド血症)
    中性脂肪が基準値を上回っている

低HDLコレステロール血症は善玉コレステロールであるHDLコレステロールが少ないことが異常とみなされています。そのため、高脂血症という言葉ではなく、脂質異常症と定義されたのです。では、それぞれの脂質異常症の判断基準となる数字を見ていきましょう。

高LDLコレステロール血症

140mg/dl~

コレステロールに関連する数値の中で心血管の病気に直結すると考えられています。最も重要視されている項目になります。重大な病気のリスクを高めてしまうため、異常がある場合は改善が必要です。

境界域高LDLコレステロール血症

120~139mg/dl

高LDLコレステロール血症の傾向がある段階で、生活習慣の改善が必要とされています。他のリスクファクターと共に考慮され、治療の有無が決定されます。

低HDLコレステロール血症

~40mg/dl

血管の病気リスクを軽減するのがHDLコレステロールです。血中濃度が減少することで、病気のリスクが高まると考えられています。

高中性脂肪血症(高トリグリセリド血症)

150mg/dl~

内臓脂肪型肥満の人に多い脂質異常です。動脈硬化や急性膵炎を引き起こすと考えられています。内臓脂肪を減らす方法を継続することで、改善が見られるかもしれません。


脂質異常症でリスクが高まる病気は?


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脂質異常症になってしまうことで、将来重大な病気にかかるリスクが高まってしまいます。そのため、コレステロールの数値管理はリスクに繋がる項目が多ければ多いほど、より厳しいものになっていきます。それは日々の生活を圧迫して、ストレスの多い毎日を送ることにもなりかねません。コレステロールの数値を改善しないままだと、どのような病気にかかりやすくなってしまうのでしょうか。

  • 心筋梗塞
  • 脳梗塞
  • 脳卒中
  • 急性膵炎

上記のような病気の他にも、糖尿病などを併発するケースもあります。複数の病気が進行してしまい、取り返しのつかないことになってしまうという危険も大いにはらんでいます。

危ない値だから治療が必要で、危なくないから治療をしなくてよいというわけではありません。脂質異常症は自覚症状がないですが、血管内にカスが存在するため血液の通りに影響が出ます。血圧は高くなり、カスが増えれば狭心症や心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気の引き金となるため、現時点でも真剣に改善に向け取り組むべきではないでしょうか。(看護師)

病気に対する危険因子が多ければ、たとえコレステロールが基準値以内に収まっていたとしても、改善しなければならなくなってしまうようです。


気にすべきなのはLDLコレステロールだけではない


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脂質異常症では、時には命の危険や後遺症といった大きな爪痕を残してしまう重大な病気のリスクが高まることが分かりました。そうなると、がぜん健康診断で出てきたコレステロールの数値が気になってしまうでしょう。

多くの人はLDLコレステロールばかり気にしてしまっているかもしれません。LDLコレステロールは悪玉コレステロールともいいますから、それさえなくなれば問題ないと感じてしまうのも無理のないことです。しかし、現在ではLDLコレステロールだけを気にするのでは不十分だといわれています。

LH比

LH比とはLDLコレステロールとHDLコレステロールの比率のことです。LH比は以下の計算式で求めることができます。

LH比 = LDLコレステロール値 ÷ HDLコレステロール値

LH比の例として、以下の3パターンを見ていきましょう。

  • A
    LDLコレステロール:135
    HDLコレステロール:40
    →LH比3.4
  • B
    LDLコレステロール:120
    HDLコレステロール:50
    →LH比2.4
  • C
    LDLコレステロール:100
    HDLコレステロール:70
    →LH比1.4

LDLコレステロールは数値が高いと病気のリスクを高めてしまいますが、HDLコレステロールは反対に数値が低いと病気のリスクを高めてしまうのです。つまり、LDLコレステロールが基準値に留めっていたとしても、HDLコレステロールが低ければ、改善の必要があるということ。

そもそも、LDLコレステロールは身体の隅々に運ばれていくもの、HDLコレステロールは肝臓に取り込まれるもの、とそれぞれ役割が異なっています。HDLコレステロールが高ければ余分なコレステロールは減少し、身体にとっていい効果をもたらすのです。

LH比が2.5を超える場合はすでに血管内に異常がある可能性が高いと判断されます。2.0以上でも、コレステロールの蓄積が進み動脈硬化のリスクが高まった状態です。LH比はCの場合のように、1.5以下に保つように目標設定をするの望ましいといわれています。

LH比を正常に保つには

脂質異常が指摘された場合は食事や運動療法が基本になるため、動物性脂肪を含む食品やアルコールは控え、野菜を中心にバランスのよい3食の食事を心がけてください。コレステロールを多く含むものは鶏卵やイクラなどの動物の卵、鰻やレバーなどがあります。コレステロールを含む食品を控えるのも大切ですが、コレステロールを排出しやすいキノコ類や魚介類、大豆製品を多めに摂ることも必要です。(看護師)
運動は少し汗をかく程度のウォーキングや体操、軽いジョギングを毎日行うようにしてください。運動が無理なら、なるべく階段を使ったり1駅前で降りて歩くなど、できる範囲で身体を動かす工夫をしてください。(看護師)

LH比を正常にしたいのであれば、単純に以下の2つのことを行えばいいのです。

LDLコレステロールを減らす

LDLコレステロールを下げる方法は、いくつもあります。以下のページで詳細に解説していますので、LDLコレステロールを下げたいという人はぜひ参考にしてみて下さい。

>>コレステロールを下げる運動・食事・サプリ・治療薬をすべて教えます

HDLコレステロールを増やす

HDLコレステロールを増やしたいという場合は、ほとんどがLDLコレステロールを下げる方法と重複しています。基本的には、LDLコレステロールを増やすような食材を摂りすぎないということがポイントになるようです。以下のページで解説していますので、チェックしてみて下さい。

>>善玉コレステロールの増やし方は?増やすには運動じゃダメ?



コレステロールの基準値の変遷


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コレステロール値の変更の歴史

コレステロールの基準値については、かつては学会ごとに異なっていましたが、医師の診断があいまいになるという理由から統一されるようになりました。

1980年代は総コレステロールの基準は240~250mg/dlでした。その後、1987年に日本動脈硬化学会がコンセンサス・カンファレンスで220mg/dlと統一した経緯があります。基準値は低く設定されたことによって、当時は脂質異常と診断される患者の数が増加したといいます。

現在のところ、コレステロールの基準修正は各団体が行っており、だいたい5年に1回という頻度でコレステロールの頻度修正が行われているようです。現在の基準では、LDLコレステロールは女性は年齢区分ごとに数値が定められていますが、男性は年齢区分がありません。

新基準以前のLDLコレステロールの基準値が60~190mg/dlだったのに対し、72~178mg/dlと改められたのは、大幅な修正になります。

コレステロールの基準値が見直される必要性とは?

コレステロールの基準値が変更されることで、陰謀論めいた論調もネット上には見られます。しかし、基本的には、コレステロールの基準値を変更することによって、脂質異常の診断を下し、二次健診を行うことで健康に対する観念の強化を図るためだと考えられています。

もちろん、後述する製薬会社との問題も無視できないことではあります。


コレステロールの基準値についての問題点


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コレステロールの基準値はどうやって決まるのか

ネット上では、様々な憶測を呼んでいるコレステロールの基準値決定の根拠ですが、ここでは、2012年版の日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」をもとに、基準値改定となった論理について見ていきます。

動脈硬化性疾患の危険因子の一つである脂質異常症の診断基準は,わが国で行われた疫学的コホート研究をもとに決定されている。その中でも重要なのが LDL-Cであるが,疫学研究では総コレステロールで検討されている。しかし,実験的にも LDLが動脈硬化性疾患の危険因子としては極めて重要であることが認識され,LDL-Cで診断することが妥当と考えられた。そして,1998年の高脂血症診療ガイドラインでは,わが国のデータから総コレステロールから算出される LDL-Cの値から診断基準が決定された。したがって,脂質の管理目標も LDL-Cを軸に決定されている。

コホート研究とは統計上同一の性質を持つグループを一定期間追跡調査し、疾病の発生率を対照比較するというものです。上記の内容によれば、コホート研究によってLDLコレステロールが病気のリスクを高めるために、その項目が重要な要素として見なされていると説明しています。

LDL-C低下療法が,心血管病(CVD)予防に効果があることを示したのは1984年に発表された LRC-CPPT試験である。しかし,本試験では冠動脈疾患(CAD)死亡が減少したにもかかわらず,総死亡率は減らなかった。この理由として治療により,その他の死亡が増加し,総死亡率は変わらないのではないかと指摘された。 このような指摘に対し解答を与えたのが,スタチンを用いた4S試験である。CAD既往がある高 LDL-C血症患者というリスクの高い患者を対象とした試験であるが,スタチン治療により死亡率は30%低下し,CAD以外の死亡率は治療群とプラセボ群ではまったく差が認められなかった。その後,続々と,スタチンを用いたプラセボ対照の大規模予防試験が行われた。
メタ解析は,対象となる患者数が多いということと,対象患者の背景が多岐に渡るということから,エビデンスレベルでいうと最も高く評価されている。このメタ解析をまとめてみると,総死亡はスタチン治療により10%有意に減少していた。話題になっている癌による死亡については,全く影響を与えないことが明らかになった。
全体としては22%の有意な低下を示した。脳梗塞は有意に予防するが,脳出血については,全く影響を与えないことが判明した。 その後の,MEGA studyも含めた一次予防試験を対象としたメタ解析では,二次予防よりは低リスクと考えられる一次予防群でも脳卒中や総死亡も有意に抑制されることが明らかになった。このような疫学的エビデンス,治療による効果を示すエビデンスを背景にしてわが国のガイドラインも形成されており,エビデンスに基づくガイドラインという意味では,LDL-C中心のガイドラインにならざるを得ないものと思われる。

このように様々な研究や分析の結果からLDLコレステロール準拠の基準値を決定していったのだと説明されています。同様に、中性脂肪やHDLコレステロールといった要素が疫病学的にどのような働きを持っているのかが評価され、基準値に盛り込まれていくこととなります。

さらに、リスク評価の方向性についても説明されています。

前回までのガイドラインでは,リスク評価を健常者に対する相対的リスクで評価し,患者カテゴリー分類をしてきた。しかし,これでは,実際にその個人が持つリスクがどの程度であるのか具体的な判断ができないため,患者への説明が十分とは言えなかった。この点は2007年版のガイドラインにも参考として取り上げられていたが,2006年に NIPPON DATA80の疫学調査研究をもとにリスク評価チャートが発表され,個々のリスクを絶対評価で表現することが可能となった。また,海外のガイドラインではすでに米国でも,ヨーロッパでもこの絶対リスク評価で患者カテゴリー分類がなされている。
わが国自体で問題となるのは,リスクを決定しているものとして,性別と年齢が極めて大きな寄与度を持っているという認識も重要である。
絶対リスクを用いることにより,性別や年齢の問題は解消でき,絶対リスクの低い患者に対する無用の治療は避けたいというのもガイドライン改訂の狙いの一つである。

つまり、年齢や性別ごとにリスク評価を区分して、これまで治療対象とされていた層に対しての評価見直しも盛り込まれていったのです。

アメリカでの動き

それでは、コレステロールの基準値について、アメリカではどのような動きが起こっているのでしょうか。

アメリカでは、2013年に心臓病学会などがコレステロールの摂取制限を設けないという声明を発表しました。さらに、2015年2月に農務省と保健福祉省はコレステロールを多く含む食品の摂取制限を新しいガイドラインで消去することとなったのです。

日本とアメリカでは食生活やライフスタイルが異なるため、一概に論ずることはできませんが、アメリカではコレステロールの上限は撤廃されています。日本もこれに追随するのかについては現在のところ明らかになっていません。

高コレステロールでメリットはあるのか?

コレステロールの基準値変更に伴って、コレステロールが危険ではないのではという論調も見られます。では、脂質が現在の基準で異常だという場合にメリットはあるのでしょうか。総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪が異常である場合に特にメリットはないというのが結論です。

総コレステロールが高いと、高血圧・糖尿病・痛風・脂肪肝・動脈硬化・脳卒中・狭心症・心筋梗塞・動脈痕のリスクを高めてしまうことになります。

LDLコレステロールが高いことで得られるメリットは、ごく限られたケースのみだといわれています。南極や北極圏などの極寒地で生活を送っている人はLDLコレステロール値が高いほど動脈硬化を軽減できると考えられています。

HDLコレステロールが低いと、肝臓から体内にコレステロールを運ぶ役割をするLDLコレステロールが増えすぎてしまい、血管などにコレステロールが溜まり、動脈硬化を引き起こすことになります。

中性脂肪はエネルギー減です。食事で摂取したエネルギーが消費しきれずに残ったもので、余った分は肝臓や脂肪細鵬に蓄えらります。中性脂肪が高いと飢えに耐えることができるようになります。


まとめ


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コレステロールの基準値はその時々の研究の成果によって修正されてきました。そして、それはこれからも変わらないでしょう。コレステロールの基準値が変更されることで、健康へ関心解が高まるというのは、様々な健康情報を見るに明らかです。

しかし、ある問題点が指摘されるのも事実です。コレステロールの基準値決定を巡っては製薬会社との癒着が噂されています。コレステロールの基準値を変えることによって、病名がつき製薬会社が製造する薬を出すことができるという一面もあります。

これをもって、コレステロールの基準値がでたらめだと断ずることはできません。コレステロールの基準値が病気のリスクを高めるという分析結果は出ているからです。ただ、アメリカでコレステロールの摂取上限が撤廃されたのも事実です。国の違いが健康基準の違いに直結するのでしょうか。そこには、各国の医療方針も関わってくることでしょう。

将来の病気のことは誰にも分かりません。ですが、将来の健康のためにできることはあるはずです。

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